毎日が本番

ライフログ

何の宴会の最中だったのだろう。


王子の会議室で、ケータリングパーティをしている光景が目に浮かぶ。


そのとき彼は、こう言った。
「本音をさらけ出さないで、うわべだけですかしてるんじゃねえよ」
それとも
「自分の過去も話さないで、わかりあおうったって無理だ」
と言ったのか。


今となっては思い出せない。
ただ、いたたまれなくなり、「失礼します」さえ言わずに、
差し入れした料理のパックも置き去りにしたまま、
逃げるように等々力に帰ったことは確かだ。


マウイから東京に戻って間もない私は、それ以前の自分自身を
受け入れることができていなかった。
自分の気持ちを語るなんて、自分の過去を語るなんて、そのことに
触れることそのものがまるで拷問のように感じていた時期だった。


そもそも彼に悪気はないし、彼にもいろいろあっただろうし、
飲んでもいたのでいちいち気にすることなど全くない邪気のない言葉
だったにもかかわらず、家に帰ってルームメイトの顔を見たら、
涙ぐんでしまった。


その後2年程経ち、彼と一緒の職場で働くようになった。
私は彼に受け入れてもらえるか、いつも気にしていた。
気にしていることを気づかれることも、耐え難かった。
気づかれたら、本音を言わなくてはいけないような気がして。。。


月日が経ち、職場にも慣れるうち、だんだん私は自分自身を受け入れられる
ようになってきた。
それとともに、彼が何を言ったとしても、それはそれ、と受けとめ
られるようになった。
彼が私を受け入れていないのではなく、私自身が勝手に殻を作って
いただけのことだった。
いろいろ人と語り合える彼が、うらやましかったからなのかもしれない。


私が職場を離れることを告げた時、彼は私にあの時と180度違う言葉を
かけてくれた。
3年間の呪縛が解けたというと大げさだが、本当に心底うれしかった。
こう書いていてもうれしくて、胸がじーんと熱くなるくらいだ。


今度いつか会うときは、私自身のことも、本音も、ちゃんと自然に
話せる気がする。
いや、もうそんなことはどちらでもよい。
代々木界隈で偶然すれ違って、やあって言える、そういう自然なこと。
これからは、そういうことを大切にしていきたい。