コーエンのSPもよかった。
が、なんといっても荒川選手のフリーは圧巻だった。
放送を見るたびに、涙してしまった。
トリノで日本唯一の金メダルだとか、フィギュアで日本初の金メダルだとか、
そういうことを超えて、ただ本当にストレートに感動を与える演技だった。
思えば、トリノオリンピック出場選手を決める、全日本選手権を見た時から
私は荒川選手しか勝てる人はいないと思っていた。
日本人は、「まおちゃん、かわいー」と言ったり、村主選手のあの情念に
まいってしまっていて、荒川選手については「ちょっとキツイ感じ」とか
言う人が多かったように思う。
ここ30年のフィギュア史等の番組でたまたまみかけた、ジャネットリン選手や
渡部 絵美選手、伊藤みどり選手等と比べても、荒川選手の素敵さは、群を
抜いていると私は感じた。手足が長く、身体の軸がしっかりしているので
見栄えがする。好みはいろいろだが、私はあの意志の強そうな顔、特に目が
大好きだ。
周りの人は、「まおちゃんが出てたらなー。。」とか「ミキティがんばれー」
とか言っていたが、私は荒川選手しかありえない、と思って、フリーの日を
迎えた。
荒川選手は、期待以上だった。
「無我無心」という言葉をふと思い出す演技だった。
私が大好きなしっかりした軸、手足の長さ、女王のような表情に加え、柔らかさ
がすごく感じられる演技だった。手の先から光の粒がこぼれて出てきている
ように感じられた。
イナバウアーが得点になるとかならないとか、そんなことはどうでもよい
ことで、ただ荒川選手のイナバウアーが見れることが、こんなにうれしい
なんて、こんなに感動を与えてくれるなんて、とそんな気持ちでいっぱい
だった。
人に感動を与えるということは、感動を与えよう、与えたいと思っている
レベルでは到底無理で、そういった邪心を全て乗り越えてたどりつく境地
なのだと、あらためて確信した。
【編集者の3行】
今まで読んで下さったみなさま、ありがとうございました。3年間書いた
キャリア通信を今日で卒業します。でも、東京散歩はどこかで書き続けたい
と思っています。