毎日が本番

ライフログ

 最後に見た花火は、2001年の8月にハワイから帰ってきた夜、月島の
 503号室のベランダからひとりで見た東京湾大華火だった。
 あの時の私は何かに疲れきっていて、華火がみな緑色に見えた。 
 今行ってきたばかりのハワイにすぐに戻りたくて仕方なかった。


 それ以前の東京湾大華火は、当時自営業をしていた私にとって、仕事の
 ネットワークを広げるための営業活動の一環であり、またスタッフの慰労の
 ためのイベントだった。
 花火&BBQという企画で50人程度を招待するので、会費の徴収や人々の
 紹介等に忙しく、花火を楽しむ時間や心の余裕が一切なかった。


 それにもかかわらず、ハワイで懐かしく思い出したのは、あの独特の音や
 火薬の臭い、生温かい東京の夏の空気だった。
 2000年に、Mちゃんが浴衣を着せてくれて見た隅田川の花火は、驚く
 ほど遠くて小さかったけど、日本を離れて見るとわすれられない記憶の
 ひとつになっていた。


 昨年は、東京にいたにもかかわらず、天候不良等で花火を見る機会に
 めぐまれなかったが、今年は絶対と思い、早くから自分で浴衣を着れるよう
 知り合いの家まで習いにでかけた。


 そしてやっと花火にたどりついた。
 ちゃんと浴衣も自分で着た。
 サイコーに気に入っている扇子も持った。
 驚く程の人の流れ。なんちゃって浴衣を着る人のなんて多いことか。
 さくらの木陰から見上げる花火は、日本の正しい花火だった。
 あの音がした。あの臭いがした。
 いろんな色の花火。いろんな形の花火。大きい花火も、連発も、どれも
 正しい日本の花火。なんにも考えず、ただ花火だけ見てればいいって
 なんてなんてシアワセなんだろう。

 
 日本人として、浴衣を着て、東京で見る花火。これからは今までとは違う
 思い出のはじまり。



【編集者のひさしぶりに2行】
 なんとか生きてれば、たのしーこともあるよって言われてそーかもと
 思った。