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王国つづき

よしもとばななさん「王国より」

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少し前は失ったものを嘆いてばかりいたが、
今となっては何も失ってなんかいなかったことがなんとなくわかる。

自分の体と心と魂、それを持ってさえいれば、
欠けるものはいつでもなにひとつなくて、
どこにいようと同じ分量の何かがちゃんと目の前にあるようなしくみになっているのだ。

もしそう感じられないのであれば、それは本人の問題に過ぎない。

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あのときは、失ったものを嘆くというよりかは、
心と魂そのものがもってかれてしまったようで、
体がどんどん小さくなっていった、ように思う。
その喪失感は、うめられるものであるはずもなかった。

今の私は、あのときに少し残った心と魂と体のカケラが
それこそサボテンのこどものように、まわりのいろんな
人たちの助けで育てられて、少しずつ元気を取り戻して
きたものだと思う。