小学六年生の女の子ふたりに算数を教えている。
ふたりは、別々の小学校で、別々の中学校を目指している。
偏差値は、たぶん25くらい違う。身長も15センチくらい違う。
勉強をしている量もたぶんすごく違う。計算の速度もすごく違う。
世の中にはいろんな小学六年生がいるんだな、と思いながら、自分はどんな
小学六年生だったっけ、と振り返る。
私は中学受験はしなかったが、付属の内部試験が一応あったので、夏休みは
夏期講習に通ったりしていた気がする。
いったい小学生の自分がどうやって植木算やら旅人算を解いていたのか、
ほとんど思い出せないが、暑くてたまらない東京のアスファルトの温度を
感じると、帰り道のアイスを楽しみに塾通いしていたことだけは思い出せた。
あの頃も、パピコをちゅーちゅーすすっていたのだろうか。たぶんそうだ。
何を思って勉強していたのだろうか。間違いなく、おやつとか、テレビとか
漫画のことしか考えていないはず。
あの頃は、自分の将来なんて、想像できなかった。親が言うことを鵜呑みする
しかなかった。それでもせっせと勉強し、今の私にいつのまにか到達した。
今教えているあのふたりの女の子は、あと10年たったら就職活動をする。
その時日本はどうなっているんだろう。その時どんな思いで将来を考えるの
だろう。
夏が暑すぎて、寝ている間は小学生の私が夢に出てくる。パピコをすって、
一生懸命宿題を解いている。夏が暑すぎて、記憶が錯綜する。
明日こそ、起きたら小学生に戻ってしまっているかもしれない。
そうなったら幸せなのか、不幸なのか、それもわからない。
どちらでもいい。ただひたすら今年も夏を乗り切るしかない。
【編集者の2行】
Fくんに勧められて、Number読もうって張り切ってたのに、なんと売り切れ。
それだけ人気ということか。それにしても桜庭痛そうだ。